MSの治療法について
MSの対症療法
疲労は外見ではわからないため、周囲の人にはこの症状を理解しづらいようです。疲労はどのように対処すればよいでしょうか?

慢性的な疲労はMS(多発性硬化症)患者さんからもっともよく聞かれる訴えです。また疾患のどのような時期でも起こります。疲労には様々な原因がありますが、その多くはいくつかの原因が重なりあって起こっています。たとえば身体的機能の低下や抑うつなどです。また慢性的な麻痺による疲労に悩まされることがあります。このような疲労は様々な疾患で起こりますが、MSにかなり典型的です*3

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痙縮とは何ですか?

痙縮とは筋肉のこわばりが増強した状態のことをいい、自分の意思に反して反射的に出現します。このような痙縮は急に動きだしたときなどによく起こります。原因としては、脳または脊髄の運動神経路に対する障害のためと考えられます。このような状況では筋肉がかなり痙攣するため、痙縮には痛みも伴うことがあります。

痙縮はどのように治療しますか? 薬物療法以外に、対処法はありますか?

治療は痙縮の程度に左右されます。比較的よく使用されている医薬品は、バクロフェン、ジアゼパム、ダントロレンナトリウムなどです。中枢作用があり、すなわち脳と脊髄の神経細胞に直接作用します。治療の開始時には、歩くことのできる患者さんは漸進的な用量の増量を守るよう注意しなければなりません。なぜなら薬剤の効果により、筋肉のこわばりが低下し、膝の関節が不安定となることがあるからです。痙縮が明らかに限局しており、広範囲でないのなら、患部筋肉へのボツリヌス毒素注射を行うことがあります。この注射の作用は一般的に約3ヶ月間持続します。

筋肉組織を弛緩させる薬物療法以外の方法では、物理療法(温熱/寒冷、体操など)があります。痙縮の場合は正常な随意運動に障害があるため、協調運動も重要です。立ち上がっている時間を定期的に設けると、拘縮と骨粗鬆症が妨げられ、また脚の静脈血栓症のリスクが軽減されます。

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うつ病のMS患者さんへのアドバイスは何ですか?

うつ病はMS(多発性硬化症)患者さんに同世代の健常人の約7倍起こるといわれています。しかし他の慢性的な衰弱性疾患の患者さんに比較して多いということは決してありません。
うつ病が疾患に対する反応であるのか(反応性うつ病)、MS発症によるものなのかという疑問は常にあるかもしれません。反応性うつ病のほうが多いと考えられます。

対応策はうつ病の重症度によって異なります。心理療法も頻繁に必要になることがあります。前向きな家族環境がとても重要であることはいうまでもありません。MS患者団体からはMS患者さんとその家族に対する相談窓口が提供されています。

排尿障害は大きな社会的制限となります。MSでおこる排尿障害はどのようなものですか?

排尿障害は、MSの炎症性病変によって脳や脊髄のある一部分が障害された結果起こります。そのうち最も多く見られるのは、尿を長時間ためておくことができなくなるという症状です。

患者さんは突然強い尿意を感じてすぐにトイレに行きたくなるか、ときには失禁(尿漏れ)してしまうことがあります。中には自分の意思で排尿することができないという症状もあります。そのような場合には自己導尿(尿道からカテーテルと呼ばれる管を入れて膀胱を空にする方法)の必要がでてきます。

排尿障害はどのように治療しますか?実行できる予防策はありますか?

排尿障害がある患者さんは、第一に尿路感染を起こさないようにしなければなりません。また尿路感染症を罹っていた場合は、その治療をします。

MS患者さんに最もよく認められる排尿障害である切迫性尿失禁(トイレまで堪えることが出来ずに尿が出てしまう状態)は、薬物療法や膀胱訓練により治療できます。この訓練では意識的に排尿の間隔を長くし、排尿の記録を付けます。軽症の場合には、水分摂取の習慣を変えると効果的なことがあります。
たとえば夜寝る前に取る水分の量を減らす、コーヒーやアルコールをやめるなどです。しかし医薬品で排尿障害をコントロールできず膀胱内の残尿量が多い場合、日常的にカテーテルを使用して排尿することが必要となります。これは思い切った方法ですが、多くの患者さんで社会的制限の少ない生活を送ることが可能となっています。

いわゆる腹圧性尿失禁の場合には骨盤底筋訓練が役立ちます。この型の失禁は一般的に、比較的高齢の女性に多くみられます。この症状は咳をしたときに尿もれするなどが代表的です。骨盤底訓練では、排尿コントロールを改善するために骨盤底筋を訓練します。

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性的障害があるMS患者さんへのアドバイスは何ですか?

性的機能はある程度まで不随意神経系の一部、すなわち反射的に起こるものです。この反射経路がMSによって障害を受けることがあります。性器の感覚障害により、正常な感覚が失われることがあります。排尿障害と同様に性的機能障害はMS患者さんに比較的多くみられますが、患者さんも医師もあまりそのことは話し合いません。
MS患者さんの障害は疾患そのものの症状に関連していて単なる心理的な問題ではありません。ただし心理的な要因も影響を与えている可能性もあります。

性交能力に問題のある男性には、最近ではクエン酸シルデナフィルが使用されて成功しています。しかしMS患者さんにおける有効性に関する大規模試験はまだ実施されていません。この薬を安全に使用するためには、患者さんに心疾患がなく、硝酸類などある種の薬物を使用していないことが重要です。MSの女性側からの不快な性器の感覚に関しては、特異的に治療することはできません。

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参考文献
  • Sheean GL, Murray NM et al. An open-labelled clinical and electrophysiological study of 3,4 diaminopyridine in the treatment of fatigue in multiple sclerosis. Brain 1998;121(5) :967-975.
  • Brañas P, Jordan R et al. Treatments for fatigue in multiple sclerosis: a rapid and systematic review. Health Technology Assessment; 4(27) :1-61.
  • Rammohan KW, Rosenberg JH et al. Efficacy and safety of modafinil (Provigil®) for the treatment of fatigue in multiple sclerosis: A two centre phase 2 study. Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry 2002;72:179-183.